鬼が居ぬ間の大掃除 のすけ/挿し絵 ちゃぶ
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暮れも差し迫ったある冬の日。
年末の忙しい時期に奇跡的とも言えるタイミングで団員全員の身体が開く日があり、「丁度良い機会だからみんなで団室の掃除をしよう」といった話の運びになった。 そんなこんなで団室に集まった団員達はそれぞれに分担して作業を進めている。 だが、そこには団長の姿が無かった。 何やら急な用事が出来たとかで、少々遅れて来るらしい。 団長が居ない団室の空気は何処と無く「緩い」。 決して誰もサボってはいないが、鼻歌交じりで作業をしている者も居たり…。 そんな中、突然神田が歌い出した。 曲自体はあの有名なCMの物だが、歌詞は彼女による即興の替え歌だった。 しかも内容は… 「だ〜んちょ〜お〜にくぅ〜たぁ〜っぷりぃおにくぅ〜 、だ〜んちょ〜おに〜くぅたぁあっぷりだ〜んちょ〜がやぁあってくぅる〜♪ だ〜んちょ〜だ〜んちょ〜ミチミチだ〜んちょ〜、だ〜んちょ〜だんちょミチミチだ〜んちょ〜がやぁあってくぅる〜♪ だんちょミッチリミッチリだ〜んちょ〜、だんちょミッチリミッチリだ〜んちょ〜♪」 少し間延びした、可愛いらしくも高い声がえらく破壊力のある歌を奏でていた…。 皆一様に辺りを見回した。 幸いにも団長の気配はまだ無い様だ。 おっかないながらも可笑しいその歌を聞いている内に、ついついつられて鈴木まで一緒に歌い出す。 最初は控え目に小さく…だが一向に団長が姿を見せないのをいい事に、段々ノリノリになって歌い出す。 更にその様子につられた一本木がこれまた即興で歌に合わせて演舞をし始めてしまった。 実に楽しそうな三人をアンナは窘めるでも無く、にこやかに見つめている。 雨宮は呆れ顔だ。 斉藤と田中も呆れながらもその様子を静観していたその時、背後に気配がした。 「だ…団長!!」 田中が血相を変えて慌てている中、当の三人ははしゃぎ過ぎてまだ団長が団室に到着した事に気付いていない。 「…ほう、実に楽しそうだなぁ、お前等?」 地獄の底から響く様な声で、やっと団長の存在に気付いた三バカは、声のする方向に恐る恐る振り返った。 …そこには引き攣った笑みを浮かべた「鬼」が立っていた。 まさに「仁王立ち」といった状態で、身体は怒りの余り小刻みに震えている。 三人は鉄拳制裁を喰らった後(鈴木と一本木は大拳骨、神田のみ極微小拳骨)、罰として三人のみでの大掃除を命じられる羽目になったのであった…。 三人が掃除を終えた後、斉藤が労いに茶を入れてくれていた。 お茶を飲んで一息入れた神田が、不意に思い付いて(全く考え無し)団長に「メタボなんとか症候群の基準で言ったら、団長のウエストサイズはバッチリメタボちゃんですよねぇ♪」なんて言ったばかりに、うっかり団長の側に居た鈴木が被害を被ってしまっている。 一本木は上手い具合に安全な所に避難していた。 「ごめんなさい団長ぉ、冗談が過ぎました〜! 鈴木ちゃん大丈夫〜?」 こうして何時もと変わらない時は過ぎ、すっかり綺麗になった団室は団員共々新年を迎えるのであった。 むろん、神田も変わらずマイペースなまま突き進むのは言うまでも無い…合掌。 |